単発の治具を1個だけ作ってほしい、という相談でした
ある実験用の治具について、製作先を探しているという相談をいただきました。燃焼試験など、条件が厳しい実験に使う治具で、まずは1個だけ作って検証したいとのことでした。
ところが単発・少量の製作を引き受けてもらえる先がなかなか見つからず、設計そのものを見直せないかという話になりました。
旧図面のままだと、部品も重量も増えていく
相談をいただいた図面は、切削加工を前提に描かれたものでした。塊の金属から削り出す設計で、部品点数も重量も増えやすい形になっていました。
切削加工そのものが悪いわけではありません。ただ、この図面のまま単発・小ロットで見積もりを取ると、費用が高くなりやすく、引き受けてもらえる先も限られてきます。
切削加工は、削った分だけ材料と時間を失います
切削加工は、材料の塊からいらない部分を削り取って形にする加工法です。削った分の材料は基本的に使えなくなり、削る時間もそのまま加工費に乗ってきます。
量産であれば、1個あたりの段取り費用は台数で割って薄くなります。単発・少量の場合は段取り費用の比率が上がりやすく、1個の価格に重くのってきます。
設計の段階で加工法を1つに絞ってしまうと、この傾向はそのまま残ります。板金加工やほかの加工法なら軽く安くできる部分も、切削のまま形になっていることが多いです。
治具に必要な機能を先に切り分けて、加工法を選び直す
設計を見直すときは、まず治具が実際に何をする部品なのかを確認しました。位置を決める部分、強度が必要な部分、見た目や取り付けのための部分といったように、機能ごとに役割を切り分けます。
そのうえで、板金加工や切削加工など複数の加工法を比べます。加工法にはそれぞれ得意な形状や強度、コストの傾向があり、同じ機能でも作り方によって仕上がりが変わってきます。
- 板金加工は、板状の材料を曲げたり切ったりして作るため、薄く軽い部品を比較的安く作りやすい加工法です
- 切削加工は、複雑な形状や高い精度が必要な部分に向いていますが、材料と時間のロスが出やすい加工法です
- 同じ部品でも、強度をどこまで必要とするかで選べる加工法の幅が変わります
すべてを切削で作るのではなく、機能に応じて加工法を組み合わせる視点で設計を考え直しました。
ラフスケッチから、板金に置き換えられる部分を洗い出す
具体的には、まず治具全体のラフスケッチを描き、部品ごとに求められる強度や精度を書き出しました。そのうえで、切削でなくても成立しそうな部分に印をつけていきます。
強度がそこまで必要ない部分や、平面的な形状で済む部分は、板金加工に置き換えられないかを検討しました。板金に置き換えると板厚で強度を作ることになるため、必要な板厚も合わせて確認します。
こうして部品構成を組み直すと、切削でしか作れない部分だけが残り、部品点数も重量も抑えた代替案になりました。単発・小ロットでも見積もりを取りやすい形に近づきます。
図面や加工法を疑うところから、設計は始められます
既存の図面をそのまま前提にせず、使用条件に合わせて加工法を選び直すという考え方は、治具に限らず試作全般で使える視点です。
古い図面や過去の製作実績をそのまま引き継ぐと、当時の加工環境や条件が前提のまま残ってしまうことがあります。今の条件で見直すと、もっと軽く安く作れる部分が見つかる場合があります。
治具製作を1個から依頼できる先を探すときも、図面を固定したまま探すのではなく、設計から一緒に見直せる相手を探す方が、選択肢が広がりやすいです。
設計の見直しから、加工先の選定まで
MACHICOCOは東大阪の会社で、町工場の技術者と提携しながら、商品づくりのプロジェクトを進めています。自社に大きな設備は持たず、開発や製造だけでなく、売るところまで一緒に取り組んでいます。
治具や試験装置の相談では、既存図面の確認や加工法の見直しといった設計段階から関わることができます。板金加工や切削加工それぞれに対応できる技術者とのつながりがあるため、部品ごとに適した加工先を選びながら進められます。
単発・小ロットの製作先の選定や、試作から先の製造・量産についての相談にも対応しています。
手書きの絵と写真があれば、話を始められます
相談をいただくときは、次のようなものを送っていただけると、話を進めやすくなります。
- 手書きのラフスケッチや図面
- 現物や試作品の写真
- おおよその寸法
- 治具の使い方や使用条件
- 希望する数量
図面がなくても構いません。加工方法が決まっていない段階でも、図面や現物を見ながら製造方法を検討できますので、まずはお持ちのものを見せていただければと思います。



