「金型一式」という見積もりだけでは、比べ方が分からなかった
商品化を検討している方から、金型の見積もりについて相談を受けました。一社から見積もりを受け取ったものの、金額に何が含まれているのかが分からず、高いのか安いのか判断できないという内容です。
試作の途中で仕様が変わった場合、費用がどこまで膨らむのか見通せないという不安も合わせて聞きました。
見積書の対象範囲が、会社によって違っていた
技術的な問題は、見積書に金型のどの部品・どの工程が含まれているかが明記されていなかった点にあります。
「金型一式」という言葉だけでは、設計費が含まれているか、試し打ちの費用が別建てかといった中身が分かりません。
複数の工場から見積もりを取っても、対象範囲がそろっていない場合、金額だけを並べて比較することはできません。安い見積もりに見えても、一部の工程が含まれていないだけということもあります。
金型はコア・キャビティ・スライドなど、複数の部品と工程でできている
金型は一つの塊ではなく、製品の外側の形をつくるキャビティと、内側の形をつくるコアを中心に、アンダーカット(型を開く方向にそのまま抜けない形状)を成形するためのスライド機構や、部分的に交換できる入れ子などを組み合わせてできています。
工程も、設計・部品加工・熱処理・組立・試し打ちと分かれていて、それぞれに時間と費用がかかります。
どこまでを見積もりに含めるかという基準は、会社ごとに違います。設計費を別立てにする会社もあれば、試し打ちまでを込みにして提示する会社もあります。同じ「金型一式」という言葉を使っていても、指している範囲に差が出るのは、こうした構成の複雑さが背景にあります。
内訳が部品単位・工程単位で書かれているかを見ています
見積もりを比較するときは、内訳が部品単位・工程単位で分かれているかをまず確認しています。設計・加工・熱処理・組立・試し打ちが別々の項目として書かれていれば、どこにどれだけの費用がかかっているかが見えてきます。
もう一つの判断ポイントは、試作品の仕様のうち変更が起きやすい箇所をあらかじめ洗い出しておくかどうかです。可動部や勘合部分(部品同士がはまり合う部分)は、実際に動かしてみて初めて分かる不具合が出やすく、試作段階で修正が入ることが多い箇所です。
この箇所を事前に把握しておくと、修正が発生した場合にどの部品の金型を作り直す必要があるかを見積もりの段階から想定しやすくなります。
対象範囲をそろえてから、複数の工場に見積もりを取る
今回の相談では、複数の工場から見積もりを取り、対象範囲をそろえたうえで比較する方法を検討しました。設計費・加工費・熱処理費・試し打ち費用を同じ項目立てで出してもらうことで、初めて金額の比較が意味を持ちます。
もう一つ検討したのは、仕様が変わりやすい箇所を先に洗い出し、変更が起きた場合の追加費用の目安を試作前にすり合わせておく進め方です。可動部や勘合部分について、修正が発生した場合にどの程度の費用感になるかをあらかじめ聞いておくと、試作の途中で費用の見通しが立てやすくなります。
対象範囲をそろえる考え方は、金型以外の発注にも使えます
見積もり比較で対象範囲をそろえるという考え方は、金型に限った話ではありません。板金加工、切削加工、表面処理など、複数の工程を経て完成する発注全般に当てはまる考え方です。
見積書の金額だけを見て高い安いを判断するのではなく、その金額がどの範囲をカバーしているかを先に確認する。この順番を守ることが、比較の起点になります。
設計から加工先の選定まで、範囲をそろえて比較します
MACHICOCOは東大阪の会社で、町工場の技術者と提携しながら商品を形にするプロジェクトマネジメントを行っています。自社に大きな設備は持たず、開発・製造から販売まで関わっています。
金型の見積もりに関しては、内訳の対象範囲をそろえたうえで複数の加工先を比較するところから対応できます。試作段階で仕様変更が想定される場合は、変更が起きやすい箇所をあらかじめ洗い出し、追加費用の目安を事前にすり合わせる進め方も一緒に検討します。
設計の方向性を詰める段階から、量産に向けた加工先の選定まで、範囲に応じて対応しています。
図面がなくても、相談を始められます
相談の際には、次のようなものがあると話が早く進みます。
- 手書きの絵や写真
- おおよその寸法
- 想定している使い方
- 希望する数量
- 参考になる現物があれば、それも
図面がなくても構いません。AIでCADデータを作成してみたものの、そのまま金型の設計に使えるか分からないという相談も受けています。
アイデア段階でも、設計・試作・加工方法から一緒に検討できます。手書きの絵や写真からでも相談できます。



