「部品がもう出ない」と言われた旧車整備の相談
旧車を整備している工場から、生産終了した部品を自社で作れないかという相談をいただきました。3Dプリンターやスキャナーを使えば作れると聞いたものの、どの機種を選べばいいのか分からないとのことでした。
設備投資をした経験がなく、判断材料がない状態での相談でした。
手元にあるのは、摩耗した実物だけだった
相談いただいた部品は、生産終了から年数が経っていて、図面も金型も残っていませんでした。工場の方が持っていたのは、使い込まれて摩耗した実物の部品だけでした。
形にするには、その実物を測って寸法を起こすところから始まります。話を伺った時点では、どこまでの精度で測ればいいのか、どのくらいの強度を持たせればいいのか、基準になるものがありませんでした。
基準が定まらないまま機種を決めてしまうと、実際には使わない精度の機種を選んでしまったり、逆に必要な精度が出ない機種を選んでしまったりすることが起こります。
生産終了した部品は、現物が唯一の手がかりになる
量産されていた部品には、設計段階で3次元データや図面があります。生産終了後、保管期限を過ぎて廃棄されていることも多く、古い年式の部品だと紙図面しか存在しない場合もあります。
そうなると、形状を知る手段は現物を測ることに絞られます。ただし実物には使用による摩耗や変形が含まれているので、測った数値がそのまま「本来の形状」とは限りません。
部品が置かれている場所によっても、求められる性能は変わってきます。エンジンルーム内で熱にさらされる部品と、外装として使われる部品とでは、耐熱性や耐候性(屋外での紫外線や温度変化への耐性)の基準が違います。
同じように計測して同じように造形しても、部品ごとに合う材料や仕上げは変わってくる、という構造です。
強度、精度、数量、保守費用を横に並べてみた
機種を決める前に、まずその部品がどう使われる部品なのかを一緒に整理しました。使用環境(強度・耐熱性・耐候性)、必要な寸法精度、想定している製作数量、導入後の保守にかかる費用の4つです。
外から見えない位置にあって荷重の小さい部品なら、精度よりも造形のしやすさを優先できます。はめ合いが必要な部品や、繰り返し荷重がかかる部品は、寸法精度と材料強度の両方を見る必要が出てきます。
複数の工場での設備投資事例を見比べながら、想定している用途に対して機種の性能が見合っているかを確認していきました。高精度な機種ほど、初期費用だけでなく校正やメンテナンスの費用もかさむ傾向があり、使用頻度と合わせて考える材料になります。
現物をスキャンして、試作を重ねながら形を詰める
実際に検討したのは、3Dスキャナーで現物の形状を測り、そのデータをもとに3Dプリンターで試作を重ねていく方法です。
一度の造形で完成形にたどり着くわけではなく、試作品を実際に取り付けて、干渉する箇所や強度が足りない箇所を確認しながら形を調整していく進め方になります。
精度が求められる嵌合部分(部品同士がはまり合う箇所)には高精度機種を使い、量産数が少なく形状確認が目的の部分には簡易な機種を使う、という使い分けも案として出ています。
機種を一本化するより初期投資を抑えられる場合がある一方、複数機種を扱う知識や保守の手間が増える面もあり、比較材料に含めています。
精度と保守費用のバランスは、旧車部品に限った話ではない
今回整理した判断軸は、旧車の廃盤部品に限らず、試作開発全般や新規設備の導入を考える場面でも使える考え方です。
高精度な設備を入れると対応できる範囲は広がる分、初期費用や保守費用も上がります。簡易な設備だけで揃えると、精度が求められる案件で対応できない場面が出てきます。
用途ごとに必要な精度を見極めて、そこに見合う機種を選ぶという考え方は、部品の複製だけでなく、新しい試作開発のテーマにも通じるところがあります。
設計の方向性から、試作・加工先の選定まで
MACHICOCOは東大阪の技術者と提携して、商品開発のプロジェクトマネジメントをしています。自社に大きな設備は持たず、案件ごとに合う技術者とつないで進めています。
今回のような相談では、現物計測の方法や、試作に使う3Dプリンターの機種選定について、複数の技術者の知見をもとに検討できます。設計の方向性を固めるところから、試作、量産に向けた加工先の選定まで、一緒に進められる範囲です。
図面がなくても構いません
相談をいただくときは、次のようなものがあると話を始めやすくなります。
- 部品の写真(複数の角度から)
- 分かる範囲での寸法
- 部品が使われている環境や条件(温度・荷重・屋外か屋内かなど)
- 想定している製作数量
- 手書きの絵やメモ
図面がなくても構いません。現物の写真や手描きのメモからでも、形状を検討する材料になります。
アイデア段階でも、設計・試作・加工方法から一緒に検討できます。手書きの絵や写真からでも相談できます。



